目次
あの頃、僕は“理由なんかなくても”やっていた
10代の終わりから20代の終わり頃まで、僕の人生は音楽に支配されていた。
バイトのシフトはライブに合わせて削ったし、月末は食費より機材を優先した。
終電を逃しても、リハの音源を聴き返して「もっと良くなる方法」を探していた。
なんでそこまでやるのかって?
よく聞かれたけど、ちゃんと答えられたことは一度もなかった。
ただ、“今これをやらなきゃ、何かが終わる気がしてた”。
周りは就職して、恋人と同棲して、結婚して、少しずつ大人になっていった。
僕も表面上は同じように見えてたかもしれない。でも、心のどこかではずっと焦ってた。
このまま“ちゃんとした人生”に収まってしまっていいのかって。
でも現実は容赦なくて、
バンドは解散し、仲間もバラバラになって、
その後はレールに乗るように社会に組み込まれていった。
仕事は覚えたし、成績もそこそこ。
日々は平穏で、そこに不満はなかった。
だけど、ふと夜中に目が覚めたときに思う。
「俺、最近“やりたいこと”に突き動かされてるか?」
あの頃みたいに、“根拠もゴールもないのに、全力でやってしまうこと”が今の自分にあるか?
そう問いかけると、言葉に詰まってしまう。
そんなときにたまたまXで見かけ出会ったのが、
谷川嘉浩さんの著書
『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』だった。
タイトルを見た瞬間、心のどこかに引っかかっていた“疼き”が疼いた。
その瞬間、kindleで購入した自分がいた。
読み始めて、僕は何度もページの途中で本を読むのを止めてしまった。
あまりにも自分の過去と、今の空白を直視させられるから。
でも同時に思った。
この本は、あの頃の自分と“もう一度話すための本”だと。
衝動は「幽霊」だという哲学
この本の冒頭、谷川嘉浩さんは静かに、しかし鮮やかにこう語る。
「衝動とは幽霊のようなものだ」
最初にこの言葉を目にしたとき、背筋がゾクリとした。
幽霊? 衝動が? なんだそれは──と思いながらも、どこか腑に落ちてしまった。
というのも、僕らはときどき「説明できないのに、なぜかやらずにいられないもの」と出会う。
誰かに語っても理解されないし、自分でも理由がわからない。
でも、それがふと現れて、取り憑くように自分を動かしてしまう。
それが、衝動=幽霊だ。
幽霊は、見えない。
でも確かに“いる”。
しかも勝手に取り憑いてくる。
しかもそれは、「夢」や「好きなこと」とは別モノだというのがポイントだ。
夢は将来を描くもの。好きなことは安心できる趣味。
だけど、衝動はもっと得体が知れない。混沌としている。名前がつけられない。
むしろ名前をつけてしまった瞬間、どこか逃げてしまうような、そんな不確かさを持っている。
谷川さんは言う。
「今の自分がパッと心惹かれているものを、わざわざ“本当”という重たい言葉で固定しようとするのは、自分の変化の兆しを見えなくする言葉遣いです。」
これにはハッとした。
たしかに僕たちは、大人になると何かを選ぶときに
「それは本当に自分のやりたいことか?」「ちゃんと続けられるか?」「食っていけるか?」
と、先回りしてラベリングしてしまう。
でも、それこそが“幽霊”を遠ざける。
それこそが衝動を見えなくする。
つまり、「確かなものを求める視線」は、ときに自分の人生を一番確かに動かしていた何かを見えなくしてしまうのだ。
この本で言う「衝動」とは、
- 自分でも理由が説明できないのに惹かれてしまうこと
- 誰にも頼まれてないのに、勝手にやってしまうこと
- “意味”がなくても、“価値”があると思えてしまうこと
それらをいったん“幽霊”として受け入れる哲学なのだ。
僕にとって音楽は、まさにそれだった。
理由なんかなくても、夜中にリフを思いついて、いてもたってもいられず録音していた。
意味なんか考えてなかったけど、「これを逃すと何かを失う気がして」動いていた。
あの衝動は、幽霊だったのかもしれない。
そして、いつの間にか僕は、幽霊の訪れを“意味”で追い払うようになっていたのかもしれない。
この章を読んだだけで、僕は少し泣きそうになっていた。
谷川さんはこうも言っていた。
「衝動は取り戻すものじゃない。もう一度“取り憑かれる”ものだ」
この言葉を、大切にしたい。そして、してほしい。
僕もあなたの中にも、まだ“名もなき幽霊”が眠っているかもしれないから。
【偏愛の連鎖】── あなたの“それ”、哲学者も愛してたよ
この本の魅力の一つは、哲学書とは思えないほど引用される作品が多ジャンルで横断的だということだ。
しかも、そのラインナップがいちいちニクい。
たとえば──
分野 | 作品・人物 | テーマ/つながり |
---|---|---|
漫画 | 『ブルーピリオド』 | 衝動に火がつく瞬間の描写 |
漫画 | 『チ。』 | 理屈を超えて「信じる」ことの危うさと美しさ |
漫画 | 『葬送のフリーレン』 | 喪失と再構築の静かな情動 |
文学 | 『ニューロマンサー』 | 情報と身体の境界を溶かす、現代的な“霊性” |
哲学 | キルケゴール | 不安を抱えながら「選ぶこと」への覚悟 |
思想 | チャールズ・テイラー | 「自己の起源」を問う内的探求 |
現代思想 | マーク・フィッシャー | 資本主義に回収されない“奇妙さ”の価値 |
ビジネス | 『モチベーション3.0』 | 外発的動機付けより“内なる駆動力” |
フレーム | OODAループ/スタンフォード式人生デザイン | 衝動の“試行錯誤的実装” |
これ、もうカルチャー好きの偏愛見本市か?ってくらいのセレクトなんだけど、単なる“かじり”ではない。
どの引用にも「その作品を、自分の人生の一部として深く受け取った痕跡」がにじんでいる。
読みながら何度も「うわ、そこ拾うか!」と唸った。
そして思わずつぶやいた。
「これ、俺の偏愛じゃん」
たとえば僕にとって『ブルーピリオド』は、まさに「衝動に火がつく瞬間」を描いた現代の聖典だった。
『チ。』の“信じるために自分を賭ける”あの覚悟は、音楽で背水の陣を張っていた頃の自分とリンクした。
『ニューロマンサー』は、現実と虚構の境界が曖昧になっていくネット時代の“霊性”の象徴だと思っていた。
……それら全部がこの本に引用されていて、鳥肌が立った。
なぜこんなにもグッとくるのか。
それはこの本が、「偏愛の言語」を話してくれる本」だからだ。
理屈じゃなく、共鳴。
知識じゃなく、疼き。
そのレベルで刺さる作品を通して、**「あなただけの偏愛は、レールではない。けれど、それが“あなただけの道”になる」**と背中を押してくれる。
言い換えればこの章は、
“偏愛から始まる人生再起動のためのブックガイド”でもある。
自分の中の小さなこだわり。誰にも言っていないマニアックな癖。
人に言うのはちょっと恥ずかしいけど、心底ときめくもの。
そういう「どうでもいい好き」の中にこそ、幽霊=衝動が潜んでいる。
そしてそれは、他でもない“あなたの人生”をゆっくりと動かしていく力になる。
この章を書き進めながら、僕はひとつの問いが浮かんだ。
あなたが最後に“何か”に夢中になったのは、いつだっただろう?
それでも“役に立たないもの”を選ぶ勇気
僕たちは「正しさ」に囲まれて生きている。
SNSではロジカルな成功法則があふれ、
職場では“合理的に動く人”が評価される。
たしかにそれは大事なことだし、役に立つ考え方だ。
でも、それだけじゃ救えない何かが、確かにある。
本書の中で、谷川嘉浩さんはこう語る。
「リスクがあるとすれば、自分という人間が持っている固有の偏りや特性を無視して生き方を決めることの方ではないか。」
正直、この言葉にはグサッときた。
僕たちは「失敗しないため」に、
- 評価されやすい道を選び、
- 誰かにとって理解されやすいものを選び、
- “ちゃんとしてる”ように見えることを優先する。
でもそれは、ときに自分の衝動を切り捨てる作業でもある。
たとえば、バンドをやっていた頃の僕にとって、
“役に立つか”なんて発想は存在しなかった。
音楽が何かの役に立つかなんて、知ったことじゃなかった。
ただ、自分の中にある「叫びたい何か」を音にぶつけていただけだった。
でも、大人になるにつれて、その“叫び”にフィルターをかけるようになった。
「これは何のためになるのか?」
「それで稼げるのか?」
「続ける意味はあるのか?」
問いのかけ方が変わった瞬間に、衝動は息を潜めてしまった。
でも本当は、意味なんてあとからついてくる。
偏愛も衝動も、最初はだいたい“役に立たない”ところから始まる。
それでも、自分の中にある「なんでかわからないけど、気になって仕方ないもの」に手を伸ばす。
そこに、あなたしか見つけられないレールが敷かれ始める。
谷川さんは、それを「実験」と呼ぶ。
衝動を無理に仕事にしろ、って話じゃない。
ただ、自分の偏愛や好奇心に小さく、でも確かに余白を与えてみること。
社会のルールに沿う生き方は、「確からしさ」に満ちている。
でも、その確からしさは、“誰かの基準”で作られたものだ。
自分の人生を本当に生きている実感は、
「ちゃんとできた日」より、
「誰にも説明できないけど、なぜか夢中になってた瞬間」の方に宿る。
“役に立つこと”が、いつも“生きててよかった”に繋がるわけじゃない。
それでも、自分の偏りを選びとる。
それでも、衝動にもう一度、賭けてみる。
それが、もう一度“やってみたくなる”人生の始まりになる。
衝動を再起動するための、セルフ偏愛ワーク3選
ここまで読んで、もしあなたの中にかすかでも「うずき」が残っているなら──
それは、幽霊が近くまで来ている証拠だ。
このラストでは、その衝動にもう一歩、近づくための問いを3つだけ贈ります。
❶|説明できないけど「なんか惹かれる」ことは?
→ 例:雨の日の散歩、ジャンクな音楽、古本屋の匂い、動画編集の没頭感…
それは“趣味”でも“特技”でもなくていい。
むしろ、“なんの意味があるのか自分でもわからない”くらいがちょうどいい。
❷|“やめたくてもやめられなかったこと”は?
→ 例:人の言葉をメモしてしまう、どうでもいいアイデアをノートに書き溜めてしまう、
推しの言動を考察してしまう、深夜の創作スイッチが切れない…
やめようとしても残っているものこそ、あなたの“偏り”だ。
合理性では消えないもの。それは「理由よりも先に来る存在」だ。
❸|あなたが最も“偏っていた瞬間”はいつ?
→ 例:バンドで音に埋もれていた夜、誰にも読まれないブログを書き続けていたあの冬、
演劇の稽古場で声が枯れるまで台詞を繰り返した日々。
偏りは、恥じゃない。誇りだ。
あなたの道をあなただけのものにする、レールを外れた“設計図”なんだ。
どんな答えでもかまわない。
むしろ、その“説明のつかないズレ”こそが、幽霊のような衝動の正体なのだから。
「レールの外」で、あなたは再び動き出す
衝動は、若さの特権じゃない。
でも、忙しさや正しさの中に、真っ先に埋もれてしまう。
気づけば、「これが正しい」「これが現実だ」と言い聞かせながら、
“本当の自分”を横目にスルーしてしまう。
でも、それでも。
幽霊は、何度だってやってくる。
そして僕らに問いかける。
「ほんとは、何がしたい?」
この本は、その問いにまっすぐ向き合う勇気をくれる一冊だ。
優しくて、静かで、それでいて、
自分の人生に火をつけたくなるほど熱い本だ。
もし、
- 最近“自分が何者かわからない”と思っている人
- 頭ではなく、心で動きたくてウズウズしている人
- 昔の自分が“バカみたいに夢中だったこと”を思い出したい人
そんなあなたに、心からこの本を手渡したい。
衝動は、思い出すものじゃない。
再び取り憑かれるものだ。
迷ったら、レールの外に行こう。
そこにこそ、「あなたしか生きられない人生」がある。
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